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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
秘密
小供は眠る時
裸になつた嬉しさに
籠を飛び出した小鳥か
魔法の箱を飛び出した王子のやうに
家の中を非常な勢ひでかけ廻る。
襖でも壁でも何にでも頭でも手でも尻でもぶつけて
冷たい空気にぢかに触れた嬉しさにかけ廻る
(中略)
母は秘密を見せない様に
小供をつかまへるとすばやく着物で包んでしまふ。
ここまで来ると聖画の一枚が眼にうかぶ。「秘密を見せない様に」の境はこの三篇のうちでも、なかんずく優れ、柔らかいきびしさもある。むだごとも書いているが、それが何かの実感に打つかると、勢いこんだ光線を帯びて来るようである。
一物もなし
夕ぐれ、輪形の星、きらめきいづる時
吾が心は呼べり
吾は人々を拒みたれば、今一物もなし
オヽ 吾が拒みしものよ
吾に来れ
吾が拒みし同胞よ、吾に来れ
オヽ吾、今一物もなし、憐れ一物もなし
吾は無なり、吾は空なり
貧乏
又月末が来た
折角買ひ溜めた本を
又売る時が来た
いつになつても僕は貧乏だ (後略)
千家は父君の仕送りだけで生活していたし、生活の指揮もしない人であったから、いつも、学生のように謙虚に暮らしていた、貧乏というものに食い込まれても大して驚かなかったであろうが、苦しさは人からも私は聞いていて、その貧乏が反対に光線を帯びて来たものに思えた。