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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

「それより要屋の条件を聞こう」

「初めにこっちの出した案だ」と宗兵衛は太息をつきながら云った、「全額の三分の二を貰えば訴訟を取りさげたいと云っている」

「そいつを待ってたんだ」

「一と月がかりで、あんな手数と時間をかけてか」

「はねつけるんだよ」

宗兵衛はなにか云いかけたが、黙って直衛の顔を見まもった。

「その願い出は記録しておいてくれ」と直衛は立ちあがりながら云った、「十二日までにあと五日ある、はねつけられた要屋はなにか手を打つかもしれない、頭がよければそんなことはしないだろうがね、――また、老職のほうでおれに圧迫をかけるかもしれない、なにしろ穏便第一だからな、しかしおれは断じてひかないぞ」

「おれはだんだん心配になってきた、中所はこの裁きになにかを賭けているようだ」と宗兵衛が不安そうに云った、「要屋の件を裁くだけでなく、ほかになにか目的があるんじゃあないのか」

「改新された御定法にはゆきすぎがある」と直衛は答えた、「そのため町奉行が幾たびも苦境に立たされたことは知っているとおりだ、しかし、いったん触出された法令をそうたやすく変えることはできない、御改新を阻止し得なかったのはおれにも責任があるから、この要屋の裁きを利用して、新しい御定法にはっきりした威厳と基準を与えようと思うんだ」