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かいていごじょうほう
改訂御定法
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页
「そうね」と佳奈は赤くなった顔をそむけながら云った、「――きっと隠れんぼでもしていると思われるんでしょ」
直衛は下唇を上へ押しあげながら、小さく首を振った、「その返辞の中へうまく自分を隠したな、狡猾だ」
「わたくしがなにを隠しまして」
「自分自身をぜんぶさ、酒がないよ」
「憎らしいお口だわ」
佳奈は直衛の眼をとらえてにらみつけた。秋のなかばになると、佳奈は「難波」で逢うことを拒みだした。料亭の人たちにもへんな眼で見られるようだし、あによめも皮肉なことを云う。これからは河本の家か、直衛の家で逢うことにしたい、というのであった。
「祝言をすれば世帯じみてしまうんだ」と直衛は云った、「家庭の煩瑣なきずなからはなれ、二人だけで暢びり食事のできるのはいまのうちだからな、他人の眼なんか気にするのはばかげた話だよ」
「との方ならそれで済むでしょうけれどね」
「そう男と女の差別をつけるのは佳奈らしくないぞ」と直衛は云った、「――覚えているが、佳奈が十一か十二のときだったろうな、男ばかりが特にいばる理由はない、なぜかといえば、男と女の違いは」
「このとおりよ」佳奈は赤くなり、合掌してみせながら遮った、「どうぞその話はやめて」