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かいていごじょうほう
改訂御定法
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页
「ははあ」と直衛は微笑した、「自分でも覚えていたとみえるな」
「そういうお口の達者なところを、御定法改新のときにどうしてもっとお使いにならなかったのですか」佳奈がやり返した、「編纂所頭取などという隠居じみたお役になってからでは、せいぜいわたくしをへこませるだけじゃあございませんの」
こんどは直衛が片手で口を押えながら、ぴしゃりと云った。
「それで勘弁してくれ、あのときは若かったので、むきになって正面から議論を吹っかけ、そのため老人たちにうまく躰を躱されてしまった、いや、こっちが左遷されたという結果が、そのまま重職諸公に躰を躱されたことになるのさ」と直衛は云った、「――あれだけは一生の不覚だった、あやまるよ」
「まさかわたくしにではないでしょうね」
「それは佳奈がご存じさ、――次の十五日にまた逢おう」
「このわたくしの部屋か」と云って佳奈はやさしく直衛を上眼づかいに見た、「御殿下のあなたのお屋敷でね」
それは室町の河本家の、佳奈の居間で食事をしたときのことであるが、この会話が終らないうちに、佳奈の兄の宗兵衛があらわれ、なんとなくその席に加わった。邪魔をしてもいいかな、と云いながら坐り、妹が淹れた茶にも手はつけず、ぼんやりと二人の話すのを聞いていた。