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しんこざいくれんがのみちすじ

新古細句銀座通

岸田 劉生

「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月24日~6月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,580 字 · 45 页

青空文庫

私は近頃、日本でこのんで建てるあの物質的な堅く寒い機械的な建築を見る度にあまりになさけなくなる。これ等については後に私の所感を少しのべようが、とも角かかる中にあって松坂屋の建築は如何にも和やかに見える。色も線も細かい、彫りも中々にいい、四月末の空の中に美しく建つその屋上には鯉のぼりが二つへんぽんと泳いでいた。

尾張町一丁目の角がマツダランプである。ここが一種のビルディングとしては最古の一つであろう。多分十余年になると思う、その向うの白牡丹は古い。一時は婦人小間物は白牡丹でなくてはならぬとまでいわれたもので、土用の丑の日べにを売り、買った人には、土製の粗末ながらへんに感じのいい黒い牛の玩具をくれたものであった。但し今もくれるかどうかは知らない。私はこの牛が好きで、時々女中や姉からこれをもらったことを覚えている。

カフェータイガーの名は新しいが、その艶色は天下に轟いている。西洋料理屋の名を艶名とは如何とは、いうものが野暮である、殊にここには、文士、画家、役者、能役者等様々の芸術家がひんぱんに出入する由、私はカフェーの味というよりも洋酒の味、西洋の味をよく解さぬため、行ってみても板につかないので、美人に接するのは有難いがどうもてれくさくあまり行ったことはないが、しかし酔余の余興に、三、四度伺候したことがある