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しんたからじま

新宝島

江戸川 乱歩

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页

青空文庫

三人がかわり合って、筏の両側にとりつけた櫂をこぎ、岩山の岸からあまり遠ざからないように用心しながら、ゆっくりこいで行ったのですが、おひる頃にはもう、湖水の真向こうの鋸山の下へ近づいていました。

少年たちは、その岩山の岸に、上陸できるような場所はないかと、注意ぶかく見はっていましたが、みな削ったようなきり岸ばかりで、どこにもそんな場所は見あたりません。

「だめだなあ。崖ばかりじゃないか。あの山を越してむこう側へ行く道なんて、どこにもありゃしないじゃないか」

一郎君ががっかりしたように、高くそそり立つ断崖を見上げていいました。

「きっとあのイギリス人は、うそをいったんだぜ。熱病にうかされて夢を見ていたのかも知れないよ」

保君も残念そうにいうのです。どんな大人だって、この高い崖をよじのぼることは、思いもよりません。ですから、山のむこう側の黄金の国とやらへは、全く行く道がないわけです。

「だって、それじゃあ、この腕環はどうしたんだろう」

哲雄君は櫂をこぐ手をやすめて、シャツの胸のポケットから、あのイギリス人に貰った黄金の腕環を取り出し、つくづく眺めながら、さもいぶかしそうにいいました。