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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
ました。
こんな時、櫂がのこっていれば、すこしでも流にさからって、筏をこぎもどすことも出来たのでしょうが、その櫂は二本とも、とっくに流してしまっていたのです。
もう運を天にまかせるほかはありません。少年たちの目に涙がこみ上げて来ました。そして、真暗闇の目の前に、なつかしいお父さまやお母さまの姿が、まざまざとあらわれて来るのです。みんな、心の中で、「お父さーん! お母さーん!」と呼びつづけました。無邪気な保君などは、口に出して、「お父さーん、助けて下さーい!」とさけんだほどです。
やがて、洞穴に吸いこまれてから、二十分ほどもたったでしょうか。三人は夢中になって、神様を念じたり、お父さまお母さまのことを思い出したりしていたのですが、そのうちに、何だか妙なことが起って来ました。
「アアあつい、あつくってたまらないや」
まず最初、保君がそんなことをいって、いきなりシャツとズボンをぬいで、はだかになってしまいました。
「ほんとだ。どうしてこんなにあついのだろう」
一郎君も哲雄君も、つづいてシャツとズボンをぬぎ、三人とも猿股一つになってしまいました。それでも、まだあつくてたまらないのです。