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しんたからじま

新宝島

江戸川 乱歩

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页

青空文庫

右の足と左の足と、少しずつ歩く力がちがうからだって」

「そうだよ。僕もその話を思い出したのさ。ここも真暗闇で何も見えないんだからね。その沙漠と同じわけだよ」

「それじゃ、どうすればいいんだい。右側と左側と、少しもちがわない力で漕ぐなんて、できっこないじゃないか」

もし哲雄君の考えがあたっているとすれば、少年たちの筏は、広い広い闇の空洞の中で未来永劫大きな輪をえがきつづけていなければならないのです。沙漠の旅行者は、空さえ晴れれば、太陽や星を目あてに方角をさだめることが出来ますけれど、この洞窟には、いつまで待っても、太陽も星も出てはくれないのです。

実にちょっとしたことです。ただ右と左と漕ぐ力が、ほんの少しずつちがうというだけのために、永久にその暗闇の世界からぬけ出せないなんて、考えても恐しいことではありませんか。

「僕たちどうすればいいんだろう。ね、どうすればいいんだろう」

保君が悲しい声で言って、一そう強く二人に抱きつくのでした。

三人はそうして抱きあったまま、しばらくだまりこんでいましたが、やがて、哲雄君の声が聞えて来ました。

「僕、君たちの顔が見たいなあ。