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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
風のない時には、蒸気機関ではしる、補助機関つきの帆船なのでしょう。
「ヤア、すてき、トラファルガルの海戦の絵にあるような船だねえ」
「ウン、ほんとだ。いつか見た商船学校の練習船もこんな形だったぜ」
「ワア、ごらんよ、ごらんよ。恐しい怪物がいるよ」
「どこに? どこに?」
「舳だよ。舳のかざりだよ」
いかにも、その帆船の舳には、人間とも動物ともわからない、奇妙な姿の彫りものがついているのです。頭に角があって、目がまん丸で、口は耳までさけて、そのくせ人間のような姿をした、怪物の半身像です。
三人はその不思議な彫刻にすっかり夢中になって、いつまでもそこに立止っていましたが、すると、一人の水夫がそばへよって来て、にこにこしながら、少年たちに話しかけるのでした。
「あれかい? あれはこの船のマスコットだよ。あいつが、ああやって目玉をむいている間は、この船は決して沈むようなことはないのさ」
縞模様のある薄いシャツに白ズボンをはいた、三十四五歳のやさしい顔の水夫でした。
「じゃ、小父さんこの船の人かい」
「ウン、こう見えても、小父さんはこの船の水夫長なんだぜ。この船のことなら、船長よりもよく知っているんだ」