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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

まず、頭から叱られて、

「すみません。どうも、遅くなりまして」

と、日吉は、一同の側へ、おずおずと見える足つきで、近づいて行った。

「七内様は」

「あれにいる。謝って来い。ご立腹だぞ」

「へい」

その日吉の声に、周りの四、五名と何か首を集めていた蜂須賀七内が、

「猿か」

と顔を向けた。

日吉が、そこへ行って、遅くなった詫びを云いかけると、

「何していた?」

「昼間から、斎藤家の御家中の邸に、捕まっていましたので」

「えッ。捕まっていた?」

七内の眼ばかりではない。辺りの眼は皆、愕然と、日吉の顔に集まって、

(すわ、大事が洩れたか)

と、動揺めきかけた。

七内は、いきなり、

「この間抜け」

と、日吉の襟がみをつかんで、手元へ寄せ、荒々しく次を質した。

「どこで、誰の手に、捕まったのだ。――捕まったとあるからには、俺たちの企てを、喋舌ったであろうが」

「話しました」

「なにッ」

「話さなければ、生命がありません。ここへ戻って来ることも出来ません」

「こいつ」

と、小突き廻して、

「忌々しい馬鹿だ。生命欲しさに秘密をもらしたとみえる。――野郎、こよいの血祭ものだ」

七内は、突放して、足蹴にかけようとしたが、日吉はひょいと、飛び退いて、その足先を躱していた。