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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

猫の飯

追い立てると、天蔵は、急にあたふた、門の外へ飛び出して、

「小僧、いつでも御厨へたずねて来いよ。手下に使ってやろう」

云い捨てて、闇へと、影を消してしまった。

猫の飯

怖ろしい一夜は明けた。

――あくる日の真昼間ごろ。

まだ松の内なので、御慶の客はちらほら絶えないが、茶わん屋の奥には、妙にしいんと冴えない陰が漂っていて、主人の捨次郎もむっそり顔しているし、いつも陽気な御寮人の姿も見えない。

その義母の部屋へ、息子の於福は今、そっと来て坐っていた。彼女は、ゆうべの悪夢の怯えからまだ醒めないように、青白い顔して、病人のように寝籠っていた。

「義母さん、今、お義父さんにも話して来ましたから、もうご安心なさいまし」

「そうかえ。そして、何と仰っしゃったえ?」

「初めは、私のいうことを、半信半疑でいらっしゃいましたが、私が日吉の日頃の素振りから、いつぞや私をつかまえて、家の裏で――御厨の野武士をよんでくるぞ――と現にあいつが、脅し文句をいったことまでお聞かせすると、ウームそうかと、びっくりしたご様子でした」

「すぐに、暇を出すといっておいでたかえ」

「それもなかなか仰っしゃらないで――見どころのある小猿だが――と思案していますから、泥棒の手先を家の中に飼っておく気ですかって――私が云って上げたんです」