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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

また、それがしから出来るだけの手当もして遣わそうが、どうじゃ、いずれを選ぶか」

「なんだと。では俺たちに、この場からすぐ引き揚げろというのか」

「斎藤家御一門の崩壊の危機。稲葉山、鷺山、共に亡びんとするこよいの大事を防ぐためには――」

「ばかなッ」

七内ではない。周りの誰かが怒って叫んだ。

「そんなことができるかッ。青二才の分際で、要らざる喙、大事の妨げすると、うぬから先に血まつりに捧げるぞ」

「一死、元より覚悟の前」

と、十兵衛の血相は、戦わないうちからすでに、白面の夜叉かのように眉を昂げ、

「弥平治どの。弥平治どのッ」

と、後ろの従兄弟に、その構えのまま声を投げた。

「斬死だぞ。よいか」

「おお。ご懸念なく」

弥平治光春も、もう大刀を抜いて、十兵衛と背なか合わせに、大勢へ備えていた。

でも、十兵衛は、なお、一縷の望みを七内らの理性につないで、

「空しく、その方どもが、蜂須賀村へ帰るのは、一分が立たぬというなら、不肖十兵衛の身を、擒人として、連れて行くもよい。拙者が直に、蜂須賀村の小六殿へお目にかかり、ようく理非をわけてお話しいたそう。――どうじゃ、さすれば、こよいの地獄も見ず、ここも互いの血を流さずにすむが」