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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

同時に。

奥向の女性たちにも、稽古事や、掃除や、また、籠城攻戦の場合の習練などもさせて、起きるから寝るまで、暇のない生活規律を立てさせた。

もちろん自分自身も。

そして或る時、藤吉郎が見えた折、やや得意そうな顔して云った。

「猿、どうじゃ近頃は」

「はッ。御威令の効き目は見えて参りましたが、まだまだ」

「まだ足らんか」

「もう一層」

「どこがまだ不足か」

「御城内の風が、御城下一般の民家へも、浸みわたって行きますまでは」

「む。なるほど」

信長は近頃、かなり藤吉郎のことばに、信を抱いて、聴くようになっていた。

侍側の人々は、それをいつも、苦々しい顔して、白眼視していた。

なぜならば、彼のように、短い年月の間に、小者小屋から畳の上へ昇った例すら少ないのに、君前へ出て、献策めいたことを、直接にいうなど、もっての外な――と等しく眉をひそめるのだった。

しかし、年額千石以上の炭薪の消費高は、その冬の半ばからもう目立って節約されて来た。いや、藤吉郎自身は、各部屋をまわる度に、

「冬は寒いもの、炭薪など、吝々せず、十分にお費いなさい。いちいち部屋頭の御判なども要らぬ。自由に、炭倉へ参って、要るだけお持ちなされ」