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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談』。同一底本的分册已合并为一书。收入:義人の姿、宝蔵の短刀、村の怪談、猫の踊、幽霊の自筆、狐の手帳、貧乏神物語、怪僧、庭の怪、八人みさきの話、一緒に歩く亡霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 页
親信は父内蔵助親直の後を継いで佐川を領していたが、大仏殿建立の用材を献上した時、元親の命を受けて仁淀川の磧(かわら)で、その材木の監督をしていたところに、左京之進親実が数人の者と狩に来た。傲慢な親信は仕事にかこつけて見向きもしなかったので、血気の多い親実は怒って矢を飛ばした。矢は親信の笠に音を立てて放(は)ねかえった。親信はその怨みを何時も持っていた。
「如何に家の頭領であろうとも、人の道にはずれたことがあってはならん、人の家来となって、その君が不義に陥るのを諌めもせずに、却てその不義を助けるとは、言語道断の所業じゃ」
左京之進は親信の顔を睨みつけた。一座はしんとした。
「吉良殿には、奇怪至極なことを仰せられるものじゃ、御主君には、信親殿の討死を御歎きの余り、せめてその姫君を千熊丸の御内室にして、それを忘れたいとの御心でございますぞ、それをお考えなさらずに、彼(あ)れ此れと申さるるは、第一御不孝の所業かと思われます」
親信も負けてはいなかった。
「何が不孝じゃ、不義に陥ろうとしているところを、陥らせまいと思うて諌めておるのじゃ、其処許(そこもと)のような無道人に阿諛(ついしょう)を云われて、人の道を踏はずそうとしているところを、はずさせまいとするに何が不孝じゃ」