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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談』。同一底本的分册已合并为一书。收入:義人の姿、宝蔵の短刀、村の怪談、猫の踊、幽霊の自筆、狐の手帳、貧乏神物語、怪僧、庭の怪、八人みさきの話、一緒に歩く亡霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 页
四
やがて朝飯が出来たがお滝が来ないので、老婆はまたお滝の室へ飯を持って往こうと思って容子を見に往った。きれいに化粧をしたお滝が、夜具の上に腹這いになって寝ていた。
「お媽さん、御飯が出来ました」
お滝は返事をしなかった。
「此処へ持ってまいりましょうか」
「煩いったら煩いよ、余計なことをお云いでないよ」
老婆は云っても駄目だと思ったので膳を持って来て置いて往った。
四
お滝は表座敷からどうしても出て来なかった。老婆や新一が思いだして覗いてみると敷きっぱなしにしてある夜具の中に包っていたり、時とすると夜具の上に腹這いになって何か独言を云っていることもあった。老婆はしかたなしに午飯を持って往った。
その後で老婆は新一と庖厨で午飯を喫った。新一は飯を喫いながら云った。
「姨さん何だろうね、お母さんの処へ来るのは」
「さあね、私にゃ判らないが、なにか魔物が来ますね」
「魔物って何だろう」
老婆はちょと四方を見廻した後に小声になって云った。
「狐か狸か、そんな物が来てお媽さんに憑くのじゃないかと思いますがね、どうしても人間じゃないのですよ」
「そうかなあ、狐だろうか」
「早く旦那様が帰ってくださると好いのですが……」