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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談』。同一底本的分册已合并为一书。收入:義人の姿、宝蔵の短刀、村の怪談、猫の踊、幽霊の自筆、狐の手帳、貧乏神物語、怪僧、庭の怪、八人みさきの話、一緒に歩く亡霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 页
二
「や、また逃げやがった、お媽さん、また逃げたのです、起きてくださいよ」
男の姿は掻き消すようになくなってしまった。其処へお滝が行灯を持って来た。
「お媽さん、知ってたのですか」
「知らなかったよ、なんだろうね、うす鬼魅が悪い」
「そうでございますよ、たしかに男でしたが」
其処へ新一が起きて来た。
「また来たのか、しまったなあ」
二
その翌晩は奥の室へも行灯を点けて、新一と老婆が境の襖を多く開けて警戒していた。新一は己の守刀の短刀を寝床の下へ敷いてあった。
お滝はもう睡ったのか咳の声も聞えなくなった。新一と老婆は己達が睡ると、また彼の怪しい奴が来るとおもったので、なるだけ睡らないようにと、小声で話し合ってみたり、顔を見合せたりしていたが、そのうちに老婆の方は昼の疲れが出て来たのか睡ってしまった。新一は姨さんが睡っても、己は決して睡るまいと思って気を張っていたが、これも気を張ったなりに何時の間にか睡ってしまった。
「……起きてくださいよ……、坊ちゃん……、……坊ちゃん」
新一は肩のあたりを揺り動かされて眼を覚したが、その起している者が姨さんだと云うことを知ると、きっと怪しい奴が来ているなと思った。