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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談』。同一底本的分册已合并为一书。收入:義人の姿、宝蔵の短刀、村の怪談、猫の踊、幽霊の自筆、狐の手帳、貧乏神物語、怪僧、庭の怪、八人みさきの話、一緒に歩く亡霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 页
一緒に歩く亡霊
一緒に歩く亡霊
田中貢太郎
「老媼茶話」には奇怪な話が数多(たくさん)載っている。この話もその一つであるが、奥州の其処(あるところ)に甚六と云う百姓があった。著者はその人となりを放逸邪見類なき者也と云っている。兎に角冷酷無情の男であったらしい。
その甚六に一人の姉があった。その姉は早く夫に死なれて一人の女(むすめ)を伴れて孀(やもめ)ぐらしをしていたが、これも病気になって秋の陽の入るように寂寞として死んで往った。姉の子はフジと云ってその時十二三歳の小女(こむすめ)であった。フジは他に引とる者がないので、甚六は不承不承に引とったが、今も云ったように冷酷な男であるから、その小女を野良犬か何かが家へ入って来たようにして、酷待(いじ)めて酷待めて酷待めぬいた結局(あげく)、ちょっとした品物が無くなると、これもその所業(しわざ)だと云って、泣き叫ぶ小女を裏の栗の木に縛りつけて飯も与えず、夜になってもかまわずに打ちゃってあった。それは寒い寒い冬の夜のことであった。小女は遅くまで叫んでいたが、その声も何時か弱ってしまってばったりと聞えなくなった。そして、夜が明けて裏へ往って見ると小女は凍えて死んでいた。