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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談』。同一底本的分册已合并为一书。收入:義人の姿、宝蔵の短刀、村の怪談、猫の踊、幽霊の自筆、狐の手帳、貧乏神物語、怪僧、庭の怪、八人みさきの話、一緒に歩く亡霊。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 页
村の怪談
村の怪談
田中貢太郎
私の郷里で女や小供を恐れさすものは、狸としばてんと云う怪物であった。
「某(たれ)さんは、昨夜(ゆうべ)、狸に化されて家へよう帰らずに、某(ある)所をぐるぐると歩いていた」
「某さんは、狸に化されて、朝まで某処に坐っていた」
「某さんは、某さんの処へ寄って、茶を飲まして貰うて、やっと正気になって帰った」
などと狸に化されて、朝まで墓地を歩いていた人の話とか、己(じぶん)の家の方へ帰っていたと思っていたものが、反対に隣村の方へ往って、其処の渡船(わたし)場へ出てやっと気が注(つ)いたと云うような話は平常(いつも)のことであった。しばてんの話も、それといっしょによく聞かされた。しばてんは小供の姿をしていた。それは親類の許から饗応(ごちそう)になって帰って来る村の男の前にちょこちょこと出て来た。
「角力をとろうか、角力をとろうか」
村の男は、なにを生意気なと思ったが、本気になって小供の対手になるのも大人気ないので、そのまま往こうとすると、小供は雙手(りょうて)を拡げて立ち塞がるようにする。
「角力をとろう、角力をとろう」
村の男は、小供を突き飛ばして驚かしてやろうと云う好奇心が起って来る。