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にほんせいしんしけんきゅう
日本精神史研究
和辻 哲郎
推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页
年代の関係から言っても、興福寺の法師が右の歌を作ってから『古今集』編纂まではわずか半世紀である。『竹取物語』は通例『古今集』よりも古いとせられているが、たといそれが『古今集』以後に作られたとしても、仁明朝からの距離は、天平時代から仁明朝までの距離よりは近い。
かく見れば、神話の沈渣としてのあの永遠の美女への憧憬が、一世紀半の間にいかに開展したかは明白となる。仙女は天女、地上的な神仙界は天上的な浄光の国土に、変質させられた。ここに仏教の影響による超自然界の深化があることは疑うことができぬ。かくてついに、肉欲的恋愛から独立した、精神的に透明な、かぐや姫の空想が生まれ出るのである。ヴェヌス山にも等しい仙女の世界と、一切の地上の肉の汚れを遮断する天女の世界とは、一見はなはだしい対照をなすように見えるが、しかしこの世界を創り出す動機においては一つである。
竹取の翁の名はすでに『万葉集』(巻十六)に長歌及び短歌の作者として現われている。前書きによると、翁は春の山で煮羹之九個女子に逢った。非常に美しい。呼ばれてそばへ行く。しばらくすると乙女らは皆ともに笑みを含みつつ相譲っていう、誰がこの翁を呼ばうのかと。