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ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう
本州横断 癇癪徒歩旅行
押川 春浪
「冐險世界 第四卷第拾貳號」博文館、1911(明治44)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,749 字 · 45 页
(八)盆踊り見物
「此奴、狡猾い奴だ」と、兵站係の衣水子、眼玉を剥き出し、
「八人前八銭ではないか、余分を返せ」と談判に及べば、船頭は一旦握った金を容易に放して堪るものかと、
「この大水だで――」と頑強に抵抗したが、「馬鹿をいうな。二尺や三尺増水したとて、四倍も増銭を取る奴があるものか。癖になるから返せ返せ」と、無理無理に二十銭だけ取返せば、船頭は口惜しそうに、
「ケチなお客だなァ」と、一行を見送りつついつまでも口を尖らしている。こっちがケチなのではない。山男のくせに欲張るからとんだ罵倒を受けたのだ。
(八)盆踊り見物
それより山道を或いは登り、或いは降り、山間の大子駅の一里半ほど手前まで来かかると、日はタップリと暮れて、十七夜の月が山巓に顔を出した。描けるごとき白雲は山腹を掠めて飛び、眼下の久慈川には金竜銀波跳って、その絶景はいわん方もなく、駄句の一つも唸りたいところであるが、一行は疲れ切っているのでグウの音も出ず、時々思い出したように、オイチニ、オイチニなどと付景気をして進んで行くと、この山中諸所の孤村では、今宵の月景色を背景に、三々五々男女相集って盛んに盆踊りをやっているが、我が一行の扮装は猿股一つの裸体もあれば白洋服もあり、月の光に遠望すれば巡査の一行かとも見えるので、彼等は皆周章てて盆踊りを止め、奇妙頂来な顔付をして百鬼夜行