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とうきょうじんのだらくじだい

東京人の堕落時代

杉山 萠円

「九州日報」1925(大正14)年1~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,226 字 · 247 页

青空文庫

「この写真は誰なの?」

小娘は又ニコリと笑った。

「このうちの姉さんよ」

「どこに居るの」

「知らない――」

小娘は笑いながら駈け降りて行った。

その額縁に立ち寄って見ると、その写真は額縁のうしろからさし込み式になっていて、表面のほかに四枚の美人写真があった。年頃は十七八から二十四五まで順々になっている。それからその額ぶちのうしろに電鈴が一つある。

記者は一寸考えてから、その電鈴を押して見た。

間もなく下から、立派な三つ揃いのモーニングを着た、四十恰好の苦味走った男が上って来た。

「いらっしゃいまし。毎度どうも……」

とお辞儀をして、記者の向う側に腰をかけた。あらかた様子を察した記者は、この男とこんな問答をした。

「僕は田舎ものでね。勝手がわからないが……」

「エヘ……恐れ入ります……」

「……………」

「……………」

「エー、どれかお気に召したのが?」

「どこに居るね?」

「エー、ここでは御座いませんので」

「どこだね……」

「エエ、いつでも御案内致します。エヘ、そのお気に召したのを御指名下されますれば、エヘ」

男の眼は早くも用心深そうに輝き始めた。

記者は失敗ったと思った。