轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 148,519 字 · 296 页

青空文庫

新八は息ぐるしくなり、ますます固くなった。

「こんどはお手て」とおみやは彼の右腕をつかんだ、「もっと伸ばして」

「もう自分でやります」

「伸ばすのよ、そんなに世話ばかりやかせるとぶってあげるから」

新八は右手をあげ、右手のあったところへ左手を置いた。おみやの眼がすばやく動いた。彼女は脇へまわり、新八の腕をあげて、腋のほうを洗った。新八は「あ」といいながら、左の手でおみやの手をよけ、右手をふり放した。湯を打ったので湯がはね、おみやの顔にまではねかかった。そのときまた、おみやの眼がすばしこく動いた。

「まあひどい、乱暴ね」

「だって擽るから」新八は赤くなった。

「こんなに湯をはねかして」

「済みません」

そのとき戸口に人の声がした。

「うちかしら」とおみやが云った。

その声は戸口でしていた。おみやは「はい」と答え、持っている手拭を絞って濡れたところを拭き、はしょっていた裾をおろすと、襷をとりながら出ていった。

戸口にはみなれない侍が立っていた。

「柿崎さんのお住居はこちらですか」

「はい、柿崎でございます」おみやは膝をついて、相手を見あげた。

それは三十歳ばかりの、躯の痩せた、おちくぼんだ眼のするどい、貧相な浪人者であった。