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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

「そうだ! ストライキという最も有効な手段を逃げる奴こそ、道義上のなまけ者だ。」

次郎は首をねじて、しばらくその方をにらんでいたが、しまいに、からだごと向きなおって、

「ちがう! ストライキは一種の脅迫だ。脅迫は断じて正しい手段ではない。それこそ道義上のなまけ者の用うる手段だ。それに――」

と、彼は一瞬馬田の方を見たあと、

「ストライキの煽動者にとっては、それは正しい目的のための手段でさえないんだ。彼らはたださわぎたがっている。ストライキ遊びをやりたいというのが、要するに彼らの本心なんだ。僕は、諸君が朝倉先生留任運動の美名に欺かれて、彼らの劣情の犠牲にならないように、敢えてこの機会に警告する。」

「よけいなおせっかいだ。」

馬田の相棒の一人が叫んだ。しかし、そのほかには誰も何とも言うものがなかった。それは、次郎のいった言葉に同意したというよりも、むしろ彼の気魄に気圧されているかのようであった。入学当時の彼の英雄的行為が、ここでもみんなの心理に作用していたことはいうまでもない。

しばらく沈默がつづいた。次郎は廊下にならんでいる馬田の仲間の顔を、ひとりびとり念入りに見たあと、また教室の中心の方にむきをかえ、いくらか沈んだ調子で言った。