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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
彼はただ笑いながら、
「父さんには、ミケランゼロの鑿なんて、とても使えんよ。下手すると、女神どころが悪魔が出て来そうだからね。むずかしいもんだ。まあ、しかし、父さんの鑿も、まるで役に立たなかったわけではあるまい。あてた鑿のあとだけは、どこかに残っているだろうからね。」
二人ははればれとした気持になって、校門を遠ざかった。次郎はうしろをふりかえって見ようともしなかった。そしていつの間にか町をぬけ土手にさしかかっていた。しかし、一心橋のたもとまで来ると、次郎は急に馬田との一件を思いおこして、不愉快になった。自分が退学したあとの学校の行きかえりのことまでが気になって来たのである。
「父さん、水をあびて帰りましょうか。」
「うむ、よかろう。」
二人は馬の水飼場に来ると、着物をぬいで川に飛びこんだ。
「次郎といっしょに水泳をやるのは、これで三度目だね。」
「ええ。」
次郎はすべての過去を払いのけるように、水の中をあばれまわった。俊亮は、首から下をしずかに水にひたして、それを見まもっていた。
水を出ると、俊亮が言った。
「きょうはもう一度、鶏をつぶそう。誰か呼びたい友達はないかね。