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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
下級の教室までが何とはなしに落ちつきを失っていた。ふだんなら何でもないことにまで先生たちの神経がとがり、先生たちの神経がとがればとがるほど、生徒たちはその神経に触ってみるのを楽しむといったふうであった。大垣前校長は、いつも先生たちに向かって、「生徒というものは、自分たちのために先生が命をすてるまでは、その先生を偉い先生だとは思わないものだ。それを覚悟の上でなくては、真の教育は出来ない。」と言っていたが、その意味をほんとうに理解した先生は、朝倉先生をのぞいては、おそらく一人もいなかったろうし、今では、どの先生にも、そんな言葉は単に言葉としてでも思い出されていそうになかった。こうして先生たちは自分を下手に護ろうとして、一歩一歩と自分を生徒たちの侮辱と嘲笑の中に追いこんでいたのである。
次郎は、学校のこんな様子を、終日いかにも淋しそうに見守っていた。彼は、花山校長の鼻の移動の話をきいてもほとんど笑わなかったし、森川の「教員適性審査採点表」を見た時には、むしろにがい顔をして、ひとりで校庭にぬけ出したほどだった。ふだんから、彼はそう出しゃばる方ではなかったが、それでも、校友会の委員会などでは、新賀や梅本と共にかなり意見を発表する方だった。