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ししゃのしょ

死者の書

折口 信夫

「日本評論 第十四巻第一号~三号」1939(昭和14)年1月~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,340 字 · 126 页

青空文庫

第一其が、われわれ男の為じゃて。

家持は、此了解に富んだ貴人に向っては、何でも言ってよい、青年のような気が湧いて来た。

さようさよう。智慧を持ち初めては、あの欝い女部屋には、じっとして居ませぬげな。第一、横佩墻内の――

此はいけぬ、と思った。同時に、此臆れた気の出るのが、自分を卑くし、大伴氏を、昔の位置から自ら蹶落す心なのだ、と感じる。

好、好。遠慮はやめやめ。氏上づきあいじゃもの。ほい又出た。おれはまだ、藤原の氏上に任ぜられた訣じゃあ、なかったっけの。

瞬間、暗い顔をしたが、直にさっと眉の間から、輝きが出て来た。

身の女姪が神隠しにおうたあの話か。お身は、あの謎見たいないきさつを、そう解るかね。ふん。いやおもしろい。女姪の姫も、定めて喜ぶじゃろう。実はこれまで、内々消息を遣して、小あたりにあたって見た、と言う口かね、お身も。

大きに。

今度は軽い心持ちが、大胆に押勝の話を受けとめた。

お身さまが経験ずみじゃで、其で、郎女の才高さと、男択びすることが訣りますな――。

此は――。額ざまに切りつけるぞ――。免せ免せと言うところじゃが、――あれはの、生れだちから違うものな。