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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
妾など、厭アなお婆さんとおぼしめすでしょうねえ」
――まんざらそうでもござんすまいと、そう云いたげに今度は梶子は、グラリと躰を右の方へ蜒らせ、ムーッとするような濃厚な色気をまた腰のつがいに見せた。
「梶子殿!」
と語気を強め、いよいよ民弥はイライラしながら云った。
彼には梶子の不真面目とも見える、ひどく色っぽい誘惑的態度が、がまん出来なくなって来た。
もちろん彼は梶子その人の、美貌や才気や胆力やに、好奇心を持ち感心もしてい、かなり好きでもあるのであったが、しかし現在の彼の心は、そうして彼の境遇は、そんな好悪の感情などに、関心出来ないところにあった。
「拙者本日参上しましたは、姉小路様よりあなた様に、お預けして、京都へ送る筈の人形、あの女男の人形を拙者の手へ返戻――お返し願いたく存じましてな、それでお伺いいたしましたので。……なにとぞお返しくだされますよう」
「おやまア」
と梶子は驚いたように――事の意外に驚いたように艶の眼を張って民弥を見詰めた。
「それはいったいどうしたわけで?」
「どうしたわけとおっしゃいますと?」
「では……それでは、姉小路様がそのようにあなた様におっしゃいまして、それで人形を妾の手から……」