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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
黄金の島
細字で認めた部厚い書面と、一葉の地図とがあらわれて来た。
地図は島の地図であった。
「地図!」
「まあ……」
「地図とは妙だ」
「そうとも恋文に地図があるなんて」
「これは尋常の恋文ではない」
「読んでみよう、面白くなって来たよ」
二人は顔を一つに集め、松平伊豆守の書面に見入った。
読んで行く二人の顔の表情は、刻々に微妙に変化した。
最初は二人ながら微笑した。
甘い昔の追憶の情と、地位高い幕府の老権臣が、長く心に持っていたところの、恋慕の感情とが細々と、文字に書かれてあるからであった。
が、にわかに二人の顔は、真面目になり好奇的になった。
黄金の島
その書面の内容というものは、
伊豆守が壮年であった頃、京都にしばらく滞在していた。そうしてその時代に鷹司家から、一方ならぬ懇情を受けた。そうして簾子姫とはわけても親しく、絶えず逢い絶えず話し合った。
その頃のなつかしさ今に忘れず、その後もどうあろうかと心にかけていた。……
などということを情こまやかに、縷々とした文体で認めてあり、さらにそれから一変し――
「その頃あなた様(簾子姫)には、怪奇な冒険的な幽幻な、物語を聞くことを好まれました。