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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

梶子と附け人

萩丸は夢中で書くのであった。

「『祖父様』と、お書きなさりませ」

「『祖父様』と、こう書くのか。書いた、菊女、さあ、それから……」

「『孫の萩丸の一生のお願い、どうぞおきき届けくださりませ』」

「『孫の萩丸の一生のお願い、どうぞおきき届けくださりませ』こう書くのだな、さあ書いた」

「『祖父様がお捕えあそばしました、明暦義党の数十人の方を……』」

「『……明暦義党の数十人の方を……』」

「『ご宥免なされてくださりませ』」

「『ご宥免なされてくださりませ』」

「『ご宥免なければ孫の萩丸は』」

「『ご宥免なければ孫の萩丸は』」

「『江戸にいる明暦義党の者に、嬲り殺しにされまする。今萩丸はその人々の手で、恐ろしいところに捕えられ、監禁されておりまする』」

「ほんとにそうだ、ほんとにそうだ、恐ろしい所にとらえられている。嬲り殺しにされるだろう。……さあ書いた、菊女よ書いた。……」

その翌日のことであったが、梶子は自分の屋敷にいた。

梶子と附け人

下谷鳥越の一所に、中山右京という大旗本の、豪奢な屋敷が立っていたが、その裏手にこれも立派な、梶子の家が立っていて、その一室に梶子はいた。