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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

二人ながらきわめて幼少の頃に、養子養女として他家へやられていた。そこで慶安騒動が破れ、正雪はじめ一味の人々、ことごとく刑殺されたばかりか、その血縁も刑に行われたが、この二人だけは幸いに遁がれ、今に生存しているのであった。

兵庫は正雪の異母弟だけに、幕府に対する反感と、勤王の血とに燃えていた。で慶安の義挙が破れ、正雪一味が殲滅されるや、その遺業を継ごうものと、ひそかに同志を集め出した。

同志は集まり多数となった。

江戸と京都と紀州とに、同志たちは別れて活動した。

菊女は女ではあったけれど、熊谷三郎兵衛の妹だけに、やはり勤王と倒幕とに、その心は燃えていた。

で、兵庫の同志となった。

兄弟と称して同居しているのは、策謀に都合がよいからであったが、そうやって同居をしているうちに、菊女の心はいつの間にか、兵庫へ恋となって傾いて行った。

その菊女の膝の先に、鞣された白猫の皮が敷いてあり、日盛りの陽があたっているので、蚤は熱さに堪えられないからか、黒茶色の猪のような小さい躯を、綿のように白く柔かく、絹のように艶のある毛並みの間を、抜けつ潜りつさせて蠢めいていた。