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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

「ご主人様のおいいつけであろうと、女子供の玩具のような、あのような人形をお武家様たるあなたが、大切らしく京まで送る! ばからしいではございませんか。ご主人様のおいいつけであろうと、お断りするのが当然というもの、それを無理にも送ろうなどと……これは少し変ですわねえ」

ここで梶子は民弥の顔を、審かしそうにジロリと見た。

民弥はまたもヒヤリとした。

そうしてまたも失言したぞと、そう思わざるを得なかった。

そういう民弥の狼狽した様子を、尚も梶子は見守ったが、何かを心に思いついたらしく、気味悪い笑いをチラリと浮かべた。

それから少しく膝を進めると、色っぽい仇っぽい姿態を作り、

「民弥様よいことがございますよ」

こう云ってまたも意味ありそうに笑い、

「二人でお送りいたしましょうよ」

「二人で?」

と民弥は怪訝そうに云った。

「はい二人であの人形を、都までお送りいたしましょうよ」

「…………」

「承わればあなた様も、明後日――いいえ今日から云えば明日、京へお帰りでございますとのこと」

「さよう明日帰ります」

「妾も明日帰ります」

「…………」

「ちょうど幸いでございますのねえ。あの人形を二人して、送って行こうではございませんか」