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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

「船を仕立ててその島へ行き、その財宝をさがそうじゃアないか」

「結構! ……是非ともそういうことに!」と三十郎も意気込んだ。

「女雛の方にも同じような秘密が、かくしてあるかもしれないねえ。どれ……」と云うと手を延ばし、梶子は女雛の冠についた、宝石へ指の先を持って行った。

この時門口の方角から、由蔵の声がきこえて来た。

「三十郎の旦那大変でーッ」

「由蔵だ!」

と三十郎は叫んだ。

「浜松の城下から帰ったと見える!」

「人形を見せては悪かろう」

すぐに梶子は不安そうに云った。

「このように高価の人形を見せたら、フラフラと出来心を起こすかもしれない」

「ごもっともで。……押し入れへでも……」

「それがいいねえ箱へ入れて。……そうして押し入れへかくすとしよう。……が、書面と島の地図とは?」

「これもひとまず男雛の胸へ、かくした方が安全らしい」

「それがいいねえ、そういうことにしよう」

万事その通りに運ばれて、人形箱は二人の手で、傍の押し入れへ仕舞い込まれた。

そこへ由蔵が駈け込んで来た。

「浜松のお城下は大変で。……謀叛人が出たので大騒ぎで……俺らは桔梗屋へ火をかけやしたが、おんなじ晩に本陣備前屋へも、火をかけた奴があったそうで。