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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
さて事情がそうであってみれば、むしろ性急に攻め立てて、敵をドンドン本陣へ追い詰め、本陣をメチャメチャに混乱させた方がよい。混乱にまぎれて梶子という女が、萩丸君を連れ出すであろうから。――で、連合軍の二手の勢は、遠慮なく青塚の勢を攻めたのである。時が経つに従い青塚勢は、次第次第に追われ追われ、本陣間近くせり詰められた。
夜の闇を明るめて飛ぶ松明!
放火されて火事となった農家もあった。
死骸もあれば負傷してうごめく、敵味方の憐れな姿もあった。
青塚郷は一瞬にして、修羅の巷と化してしまった。
敗報が次々に本陣へ来、負傷者がドシドシ運ばれて来た。
ことの意外に驚いて、
「これはいったいどうしたことだ!」
「城方の奴ばら血迷ったか!」
「味方の腑甲斐なさ何んということだ!」
と、嘉門も右内も地団駄をふんだが、どうすることも出来なかった。
「屋敷の四方の門をとじろ! ……女子供は屋内へはいれ! 老人も負傷者も立ち上がり、敵寄せて来ば戦え戦え!」
と、二人は屋敷の四方を走り、声をからして呼ばわった。
覚悟はしていても女は弱く、気絶して仆れる者もあり、子供の中には泣く者もあった。