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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
これはいか様お言葉通り、萩丸様を取り返すためと、我々を捕えるためでござろう。それにいたしても我々一同が、この島へ渡来いたしたことを、どうしてそのように紀州藩へ知れたか?」
いぶかしそうに兵庫は云った。
が、それにしても兵庫たちこそどうしてこんな島へ来たのであろう?
青塚郷のあの乱闘! それがともかくも和睦となった。
しかし兵庫たちは考えた。
(うっかり講和の談判などに、日時を費やしては大変である。そのうちに城方め大兵を出して、こちらを揉みつぶすに相違ない。それより神速に、脱出しよう)と。
で、ほとんど電光石火に、明暦義党の同志たちは、郷民全部と連れ立って、背後の山越えに脱出した。
日頃の嘉門の訓練が、このような時にも役立って、文字通り一人の落伍者もなかった。
道々嘉門は指揮をして、親類縁者のある者は、それへ手頼って落ち行かせ、落ち行く者へは負傷者を預け、その治療を依頼した。
頼み甲斐ある友人のある者は、そこへも手頼って落ち行かせた。
さてそうして一月の間に、あらかた人々のかたをつけた。
が、壮心ある者と、行き場所のない人々ばかりが、尚しかし多数残った。