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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
大坂の港から船を仕立て、例の地図を手頼りとし、この××島の黄金島へ渡り、これも地図をたよりとして、この土地へこうして踏み入ってからも、菊女は三十郎を優しくあつかい、油断させようとした。
さて、二人は洞窟内にいた。
「菊女殿」
と云いながら、三十郎は洞窟の奥の、岩壁の裾に据えてあるところの、人形箱へ眼をやった。
「女雛の胸にも秘密の隠し所が、作られてあることご存知かな」
これを聞くと菊女はギョッとした。
(それをこの男は知っていたのか!)
(それなら大変だ!)と菊女は思った。
が、何気ない様子をつくり、
「まあさようでございましたか、わたしはとんと存じませんが。あなた様はこれまで絶対に、わたしに人形はあつかわせず、……ですから何んでそのようなことを……」
「なるほど」
と三十郎は苦笑いをしたが、
「あなたに人形をあつかわせなかった理由も、その隠し所があったからで……」
「まあそんな。……でも何故?」
「その隠し所に大変なものが、蔵してあったからでございますよ」
「まあ……でも……大変なものとは?」
「紀州の御曹司萩丸様が……」
「…………」
「多数紀州で捕えられたところの、明暦義党の同志とやらを、救命してくだされと頼宣卿へ……」