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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

と云って来て五十嵐右内は、にわかに恐怖を顔に浮かべ、

「ところが奇怪にもみちしるべが、解らなくなってしまいました」

「紛失いたしたと云われるのでござるか?」

「いえ、みちしるべはありますので」

「ありながらそれが解らなくなる?」

「ここの加減で」

と云いながら、右内は自分の頭を抑えた。

「頭の?」

「さよう」

「…………」

「錯乱しますので!」

「恐ろしい話だ!」

「恐ろしゅうございます」

「が、しかしどうして頭が?」

「毒素を含んだ空気のためで」

「ははあ。……いよいよ恐ろしい話だ」

「ああいう洞窟にはそういう空気が、ある地点まで行きますと、充満していると申すことで」

「さような学説聞いたことがござる」

「ところで洞窟には四つの通路が、通っているそうにござります。しかるに一筋が未発見だそうで。で、普通には三筋の通路が、通っていると解されているそうで。……このことが何んとなく私には、重大なことのように思われまする」

夕陽が消えて闇が迫って来た。

用意して来た松明をともし、二人は林を分けて登った。

お蔵の迷路

菊女は夢中で「お蔵」の中を、奥へ奥へと走っていた。

その後から三十郎が、呼びかけながら走っていた。