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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

などと話しながら行くのであった。

つけて行く三十郎には、話し声は、ほとんど聞こえて来なかったが、その親しそうな話しぶりは、松明の光でよく見えた。

これが三十郎の嫉妬心を、煽り立てずには置かなかった。

(犬帰村への峠道でも、二人並んで馬首を揃え、仲のいいところを見せつけおったが、こんな所へまでやって来て、仲のよいところを見せつけおる!)

こんなことまで思われた。

(斬ろう!)

と三十郎は決心した。

(あの曲がり角を曲がるところを、背後から民弥を一刀に!)

でスルスルと追い逼った。

右左へ曲がる辻があった。

そこを二人は左の方へ曲がった。

疾風!

三十郎は躍りかかろうとした。

とたんに眼を射る光があった。

右手にあった枝道から、松明の光が来たのである。

(しまった!)

と三十郎は飛び退き、素早く別の枝道へ隠れた。

その間に梶子と民弥とは、そんな危険があったとも知らず、左の方へ曲がって行った。

と、間もなく兵庫と右内とが、松明で道を照らしながら、右手の枝道から現われて来た。

三十郎には気がつかず、梶子たちの行ったとは反対の方へ、話しながら進んで行った。

三十郎は枝道から出て、急いで曲がり角へ走って行き、梶子たちの行った方角を見た。