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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
洞内の奇異
た段、有難うござる、お礼申す」
と、まず加藤源兵衛が云うと、
「兵庫と右内とが洞窟内にいるとか、それ方々洞内へはいり、二人を捕え連れて来られい! いや拙者も、拙者も参る!」
と、霜降小平が駆け入ろうとした。
洞内の奇異
三十郎はあわてて止めた。
「霜降氏、それは危険じゃ。……只今拙者申しましたとおり、洞窟の中には枝路多く、うかうかはいって行こうものなら、容易に外へは出られませぬ。……兵庫や右内もかかるがゆえに、今に洞内にウロウロと、うろつき廻っておりますので。……で、兵庫や右内めを、討って取ろうとなさるなら、この洞窟には他に二つの、出入り口がある筈にござりますれば、その二つの出入り口と、ここの口とに待ちかまえていて、出て来たところを討ってとるが、最も賢明で安全でござる」
「なるほど」
「それがいい」
「では同勢を、至急三つに分けようではないか」
「では加藤氏には一手を率い、南側の口をお守りくだされ」
「霜降氏には一手を率い、もう一方の口をお固めくだされ」
「刃氏にはここにこのまま、菊女を警護し二、三十人にて、お止まりくださるようお願い申す」
――こうして紀州の藩士たちは、三手に別れてこの岩山の、二方に向かって散ってしまった。