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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

と一座の中から、怒鳴るがように叫ぶ者があった。

「裏切り者の紀州公へは、ご愛孫の生首を差しつけて、思い知らせるが何より必要、萩丸の首斬るがよろしい!」

これは金井半九郎であった。

慶安義徒の重鎮の一人に金井半兵衛という痛快児があり、剣道にかけては正雪以上、党内に比肩者なしと云われた。

では金井半九郎は、その半兵衛の血縁者なのであろうか?

いやいや決してそうではなく、半兵衛の人物にあやかりたいものと、そう思って金井半九郎と宣り、武を練り文を修めている者で、本名は市川準五郎と云った。職業は柴田一角と同じく、町道場の主人なのであった。

「というのは今日まで萩丸殿に対し、我ら手をかえ品を代えて、紀州公への宥免状を、認めさせようといたしましたが、萩丸殿頑として聞き入れませぬ。……で、いつまでもべんべんと、このまま日時を費やしましたなら、紀州藩の者や町方の者に、この本部を突き止められたあげく、萩丸殿を奪い返されましょう。そうなりましては虻蜂捕らず! ……いやそればかりでなく捕えられたところの、紀州における我らが同志に、おそらく一段の憎しみかかり、急速に刑殺されましょう! ……如かずそれよりも我らが方より、急速に出で機先を制し、萩丸殿の首を斬り、それをひっさげて紀州に潜入し、紀州公を怯かし、破獄して同志を奪還いたすこそ