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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
――さあさあこれが前祝いの祝儀だ」
三両がところを懐中から出した。
「これはお気前のよいことで」
「早速頂戴いたして置いて」
「仕事は仕事でミッシリやろうぜ」
と、三人の破落戸は小判を受取ると、ほくそ笑いをして出て行った。
一人となった三十郎は、うまくもない酒を飲みながら、ここに集まっている人々の話へ、それとなく耳をかたむけた。
というのはうしろ斬りの悪剣を用いて、辻斬りをして金を奪う武士が、刃三十郎その者であり、その辻斬りの武士の噂を、ここの連中がしているからであった。
それにしてもどうして三十郎は、和歌山城下などへ来たのであろう?
××島から一番に近い、本土の立派な、城下といえば、この和歌山の城下だからで、それで、彼は船頭に頼み、××島を脱け出して、このお城下へ来たまでであった。
収入のない彼であった。辻斬りでもして金を取らなかったら、その日その日にさえ事を欠いた。で辻斬りをやりだしたのである。
そうして彼は昼の間は、城下外れの街道筋の、非人小屋にかくれて住んでいた。
そのうちに彼は姉小路様一行が、この城下へ来たことを聞いた。
(梶子も菊女も来たそうだ。