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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

と民弥が苦々しそうに、

「ご坊ご坊、おつつしみなされ」

と、少しく声を強めて云った。

「菊女殿にとりましては、色仕掛けなどというが如き、不純の策を用いること、心外千万であられる筈、それを押し切ってやらるるというは、党のため同志のためを思えばこそでござる。それを何んぞや面白そうに、からかう如き不謹慎のお言葉、ちとおたしなみなさるがよろしい」

それから菊女を気の毒そうに見たが、

「天晴れのあなた様のご決心、同志一同感謝いたすでござろう。では菊女殿明日ともいわず、今夜忽ちに二つの手をもって……」

それから鵜の丸兵庫に向かい、

「鵜の丸殿、いかがでござるな?」

「よろしかろう」

兵庫は云った。

兵庫にしてからが菊女という娘が、この自分を愛していること、だからそのような色仕掛けなどで、萩丸に対するということなど、彼女が嫌いだということは、充分心では知っていた。また自分にしてからが、憎からず思っている菊女をして、そのようなことをさせることは、甚だ心外ではあったけれど、他にとるべき手段がなかった。

で、同意をすることにした。

「では」

と云うと松浦民弥は、やおら席から立ち上がった。