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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「ずっとご滞在でござりまするか?」
ややあって梶子は何気なげに訊いた。
「いや明後日出発しますじゃ」
「明後日? まあまあ、それは急な。……で、ずっと京都のお館へ?」
「ところがよそへ立ち寄りまする。……骨休めにな、湯治に行きます」
「骨休めのお湯治? それはそれは、結構、おうらやましく存じまする。……で、ご同勢お引き連れで?」
「同勢といってもほんの少数。今回は忍びでありましたからな。……その同勢も追い返し、一人二人連れて参りますじゃ」
「あのう……たしか……ご同勢の中に……松浦様もおいででございましたわね」
とうとう梶子は云い出してしまった。
今夜彼女がここへ来たのは、何も老いたる姉小路卿などに興味を持って来たのではなく、恋している民弥の顔が見たい。――そう思って来たのであった。
それに、もう一つ、萩丸事件に――萩丸が誘拐された例の事件に、民弥がはたして関係しているかどうか? ……このことも一応探って見たい。……関係していたら困ったことだが、でも一応は探って見なければと、こうも思って来たのでもあった。
「民弥でござるか、民弥もおります。……が彼は明後日、恋の進物を警護して、京の屋敷へ帰りますじゃ」