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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
(あぶない、危険だ、手ごわい相手だ!)
鵜の丸兵庫の剣技については、入谷田圃で試験ずみであった。自分と伯仲の間にあった。ただ自分に背後斬りという、特殊のワザがあったため、悠々あの時は引き上げ得られたが、二度とは同じ相手に対して、使うことの出来ない悪剣であった。
使っても無効の悪剣であった。
民弥の技倆は未知であったが、相当の使い手と思わなければならない。菊女という女はたかが女、とはいえ今見る縁の上での、身の構えから推察すれば、女としては水準以上の、これも使い手と見なければならない。
要するに相当の使い手ばかりを、三人向こうへ廻したのである。
(あぶない)
と三十郎はつくづく思った。
(が、どうともして遁がれねばならぬ)
これも引き抜いた刀を構え、なおも地面にひれ伏していた。
八ツ手の葉が座敷からの燈の光を遮り、そこはとりわけ暗かった。
そこに身を伏せている三十郎であった。
兵庫にも民弥にも見えないらしい。
とはいえ確かにそこにいると、見当をつけてソロリソロリと、今二人は寄せて来る。
ついには発見をされなければならない。
(どうしたものか?)
と三十郎は思った。