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わたしのりれきしょ
私の履歴書
井上 貞治郎
――放浪の末、段ボールを思いつく
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页
第二の“母の胎内”二畳座敷
ところが浅草小島町まできたとき、交番の巡査が私を呼んでいる。はだしで歩くのは罰金だというのだ。『ぞうりでも買ってはけよ』さすがに気の毒そうにいってくれたが、それを買う金もない。情なかった。はだしの足には六月の雨さえ冷たい。くちびるをかんでこみ上げてくるものをこらえ、ただ歩いた。そして御徒町二丁目までくると、中屋という店ののき先に、「男入用」と書いたかまぼこ板がぶら下がっている。私のはだしの足は自然にその店へ吸い込まれた。結局私はここで雇われた。中屋は紙ばこ道具、大工道具などを売っている店で、私は外交員として使われることになった。この店の片隅で、小さな綿繰り機械のようなものを見かけたが、この機械のイメージが、後年私が段ボール機械を工夫するときの「ひな型」になったのである。
第二の“母の胎内”二畳座敷
中屋はどうしたわけか、住込みではなく、そのかわり木賃宿代として日に十銭ずつくれる。こんどこそひとふんばりだと、私は業平橋の下総屋という木賃に泊まって、大張切りで中屋に通った。そして片手間に横町のシンガーミシンの外交も引受けた。
このミシンの外交で五円の金がもうかったので、私は仲御徒町の路地のどんづまりで月九十銭の部屋を借りた。