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わたしのりれきしょ
私の履歴書
井上 貞治郎
――放浪の末、段ボールを思いつく
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页
無一文で横浜へ
そこで私はひそかに調べてみたものである。
これまで別家した二人の奉公人のうち、友七さんはしょう油屋を、もう一人は米屋を営んでいずれも川西家に納めていた。二人とも二十年も奉公した末がこんなふうなのだから、私には別家もたいしたことはないなと子供心にも思えてくる。第一私が国からはるばるやってきたのは商売を覚えるためなのに、子守りばかりさせられている。毎日がいやでたまらなくなってくるのだった。私は有馬道からやってくる畳屋のきわさんに『どっかほかにええ店はないか』とそっと頼んでみた。その後の私を引きずり回した生来の放浪性がようやくこの時分から首をもたげてくるのであった。
無一文で横浜へ
畳屋のきわさんが世話してくれたのは、神戸三の宮の松浦有平という洋紙店の住込み店員だった。ここはおもに外国人の経営している工場の紙を扱っていた。細君は混血児で目の色のちがった子供がおり、主人は病身、なんとなく活気のない店だった。私は十五歳になっていたが、この紙を扱った最初の経験は、後年私が段ボール創業の際、非常に役立った。しかし店に活気がないので働く私の張合いも抜ける。第一、ボール板紙の出し入れは肩が痛くとてもつらい。