轻松读懂日语经典作品
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わらうあくま
笑う悪魔
野村 胡堂
「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页
「兄貴は東京一番の御馳走にあり付いて居るよ」
千種十次郎を兄貴という早坂勇も、もう三十近い働き者で、昔は「足で種を採るから」足の勇と異名を取った男でしたが、今では若い乍ら東京ポストの社会部では良い顔で、時には千種十次郎の代りに、若い外交記者にも指図をし、手の足りない田舎版位の編輯は手伝って居るのでした。
「そいつは聞捨てならない、何処の売出しの披露だ」
「兄貴がそんな間抜けな御馳走を喰うかな、今夜のは同郷の大先輩、熊谷財閥のオン大、熊谷三郎兵衛の誕生祝の御座敷だよ」
「そいつは気が詰るだろうな」
「此方が新聞記者だ、大臣大将が束で来ても屍とも思わない位の修行を積んで居るが、その座敷はたった一人、兄貴をワクワクさせる相手が居るんだよ」
早坂勇は原稿を整理して居る筆を投り出して、何時の間にやら虎井満十の相手になって居るのでした。
虎井満十は呑ん平で喧嘩早くて、始末の悪い男には相違ありませんが、正直で感がよくて、特種取りの名人で、新聞記者としては、東京で何人と言われた腕達者だったのです。
新聞記者のヒネたのには、よく斯んな途方もない人間が居りました。虚無的でダラしが無くて、箸にも棒にもかからないようで、そのくせ純情的で正義感が強くて、悪の摘発のためには、どんな艱難でも、笑って押し切ってやろうと言った肌合の人間です。