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わらうあくま
笑う悪魔
野村 胡堂
「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页
双刃の剣
「刃物が庭で見付かったよ」
誰やらが下の方で大きい声を出して居ります。そして玄関からは、
「兄貴はどうした。東京ポストの千種十次郎ですよ」
早坂勇の無遠慮にワメキ立てる声も聞えます。
双刃の剣
「居るかい、兄貴」
この騒の中へ、熊谷邸の玄関から飛込んで来たのは、東京ポストのヴェテランで、足で種を採るから「足の勇」という異名を持った、早坂勇の張り切った声でした。
「貴方は、どなた様で――失礼ですが御名刺でも――」
秘書の本田大助は、大手を拡げないばかりに、此処を先途と玄関に関を据えます。
「これは失礼、東京ポストの早坂勇ですよ、――名刺はこれ」
勇は上着のポケットを捜って、少々汚れたお仕着せの名刺を取出しました。
「新聞の方なら、明日でも改めてお出を願い度いのですが、唯今は丁度取込みがありますので」
秘書の本田は、その名刺をろくに見もせずに押し戻します。
「その取込みを聴いて来たんです。お嬢さんがどうかなすった相じゃありませんか」
「もう、そんな事まで」
「新聞の早耳ですよ、兎も角、私の社の千種十次郎が来て居る筈ですから、逢わせて下さい」
「それがその」
「君は取次ぎゃ宜いんです」