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わらうあくま

笑う悪魔

野村 胡堂

「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页

青空文庫

カフェ「シレネ」

が、これは併し法雲寺五郎の復讐の二段階にしか過ぎません。続く四つの段階――最後の「死」にまで導く手段はどんなものであろうか、千種十次郎ももう一度背筋の寒くなるような恐ろしさを感じました。

カフェ「シレネ」

銀座裏のカフェで、その頃一番清潔で、家庭的な明るさを持った「シレネ」、その奥の一と間は新聞社の御連中の専用の形ちになって居り、どんな時間に行って見ても、二人や三人の記者達が、仕事を持込んだり、事件を期待したり、編輯局の一部のような、気楽な心持でおしゃべりをして居るのでした。

新聞記者という人種は、どれもこれも、幾分放浪者の素質と、自由主義者的な性癖があり、編輯局と言った、かなり呑気な事務所にさえ窮屈さを感じて、自分の肩にかかる当面の仕事さえ無ければ、斯んなところに逃避して、呉越同舟に気楽な時間を過して居るのです。

其処へ時々やって来るのは、あまり有名でない文士と、一向流行らない書家と、そして警視庁の若い刑事達でした。新聞記者の集まるところには、必ず特高の刑事を潜入させるのが、明治大正以来の警察常識で、カフェ「シレネ」などは、その点まことに情報交換所としても、第一流の場所だったのです。