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うつくしいにほんのれきし

美しい日本の歴史

吉川 英治

「週刊文春」1959(昭和34)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,561 字 · 37 页

青空文庫

菊池寛氏のオチ

ところが、そのどっちにも男は皇太子(三条帝)と同じ興ざめを抱くだろう。どっちにしろ、男の観察が女をこころみる場合の眼は、暴戻無慈悲なものであるから、万一にも男から氷を手に載せられるなどの試しを仕向けられたら、女性はよろしくその処置に女性特有な冷めたい細心と美の放散を併せ用いて、逆に男へ火をつかませる思いを与えなければなるまい。

菊池寛氏のオチ

ふと、このごろ奇妙な現象に気がついた。以前はよく『まあ、話にはできるがね。とても、活字には出来ないな』といった類の性の問題が、近来はまったく逆である。単行本や雑誌の上で活字にはされている事が、われら明治の末葉生れの人間には、どうも口では話しにくい。

いやそこ迄でない恋愛の仕方にしてもそうである。つらつら考えてみると、私たち年代の者は、まるで性の清教徒みたいな環境(内実ではない)の中に培われて来た気がする。そこで菊池寛氏がかつて好んでやった「名将伝」の講演では徳川吉宗のこんな挿話をよくしていたことなど思い出す。

八代将軍の吉宗は、前代までの淫靡な弊風を改革するためには自身もつむぎの袴しか用いないほど質素な範を示して、当時の名君といわれた人だが、それでいてなかなか粋なところもあった。