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うつくしいにほんのれきし

美しい日本の歴史

吉川 英治

「週刊文春」1959(昭和34)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,561 字 · 37 页

青空文庫

尼のもの底無し

結局、性と文芸とか、本能と人間性の両面とか、性を堂々めぐりして、自分から口にしかける話題に自分で躓いたり、吃ったりしつつやっと四、五十分の責を終ったに過ぎなかった。ところが、あとから編集者は言って来た。

『こないだのは、たいへん面白かったじゃないですか。ひとつあの速記を次の号に載せさせてくれませんか』

そうかなあと思って、速記の原稿のゲラ刷りを取寄せてみた。これは活字である。こんな話が活字になるのかと思ったら、もうテレくさくてしようがない。かんにんしてくれと頭をかいてあやまった。けれど、それを演壇で喋べったときは、どうしてだか、聴衆はたいへん真面目に聞いてくれた気がする。もっとも一つ二つの例話などのときは聴衆も演壇の私も一しょくたに、笑ってしまったりしたものだった。その後、聴衆の二、三からも、あの折の尼さんの話の出典は何かなどの問合せを受けたりしたが、ついその儘になっているので、こころみに、ここでその一端を活字にしてみる。

尼のもの底無し

戦後、私は読売に「高山右近」を書いた。右近の青春の蜜と、蜂のような女達を書いて、それから、後の切支丹大名デウス右近へゆくつもりだった。